The End

東を恋い、遣る瀬なく、西を思い、寄る辺なく、北を望み、切なくて、南を向き、詮なくて、人の出会いは、月に叢雲、花に風、金の色して行く夜に、遠と近と、一処に止住す例なき、道なる雲の逢う時離る時、往くも還るも別れては、袖振る縁の擦れ違い、掬ぶ手の、雫の味も絶えずして、形影の、相伴うも弔うも、また同じ、愛郷失い、知音絶えても、流転続ける、徒野に、せめて転がる石の名を、常磐堅磐にと歌うばかり。

Shine On You Crazy Diamond

生まれ変わったら鳥になりたかった。
けれど、鳥には鳥の苦労があるのだろう、と今は思う。
案外他人の苦労は分からないものだ。
だから自分が苦労を覚えるたび、他人はもっと苦労していると考えることにしている。
気楽な人生だ。
狂気と正気に線を引くことも止めにした。
虚しい作業だった。
何も分かりはしない。
何も分かったりなんてするものか。
できることと言えば、我が身を虚仮にして生きていくことだけ。
常に最低の事態を想定して、それよりは良い現実に妥協するのみ。
一人の世に慰むべき無聊もなし。
ただ泡沫に揺られ漂い続ける。
月曜日は働いて飯食って寝た。
火曜日は働いて飯食って寝た。
水曜日は働いて飯食って寝た。
木曜日は働いて飯食って寝た。
金曜日は働いて飯食って寝た。
土曜日は働いて飯食って寝た。
日曜日は働いて飯食って寝た。
十代は光のように。
二十代は風のように。
三十代は水のように。
四十代は砂のように。
五十代は夢のように。
六十代は気付かぬ内に。
全ては過ぎ去って行った。
手元に残ったのはささやかな富。
最早欲するものもなし。
小さな墓石だけが地獄の道連れ。
冥土に捜す人もなし。
刻んだ名前も時が掻き消す。
古びた石だけが生涯の証。
それもやがては打ち砕ける運命。
願わくば人生が燃える宇宙であるように。
輝き続けろ歪な石塊。
消えた人の名を叫び、歌い続けるために。

Larks' Tongues In Aspic

自然は美しい。
などと口走る人間がいる。
勿論それが自然の一面に過ぎないことは言論を待たない。
清浄と汚濁との混沌が自然である。
そして自然との格闘が人間の技術の歴史と言ってもいい。
だから自分は人造物、それを生み出した人間の努力は愛している。
又、時として自然の美しさは人造物への嫌悪からもたらされる。
結局、美醜を定めるのも人間に他ならない。
どの鳥が自然は美しいなどと囀るだろうか。

The Gates Of Delirium

何故狂気に走るのか。
という点は淡泊に解消したので構わないだろう。
しかし狂気を作中でどう扱うのか。
この姿勢は至極重要だ。
単に排他したのでは余りに幼稚だ。
かといって全ての人間に存在するとするのも陳腐だ。
果たして狂気とは走って向かうものだろうか。
そもそも本当に彼は狂気なのか。
それとも周囲が狂気なのか。
少なくとも狂人は少数派であり、少数派とは狂気を孕むものである。

Wish You Were Here

会いたい人には会えないし、欲しいものは手に入らない。
大切なものは手を離れるし、捨てたいものだけ積もっていく。
明日は過去になり、昨日は遠くへ行ってしまった。
追い立てられるように生きて、結局何も残せない。
隣人の死よりも、史上の死に涙して。
伸ばした手は届かないし、叫んだ声も届かない。
我が身は可愛いし、真実からは目を反らしたい。
耳と目を閉じ口を噤んで生きることに慣れた。
吐いた嘘を数えることも止めてしまった。
また一つ卑怯になった。
いずれ離れることは分かっているし、やがて忘れることにも気付いている。
色彩の欠けた世界にしか暮らせないと知っている。
それでもあなたがここにいてほしい。
なくならないものもここにあると言ってほしい。
それだけのことで私という小さな男は随分と救われる。

Blowin' In The Wind

東の門を出ると老人に出会った。
南の門を出ると病人に出会った。
西の門を出ると死人に出会った。
北の門を出ると行人に出会った。
彼に尋ねてみたんだ。
なあ、他の所へ行ってみたかい。一人貪る醍醐の味はそんなに美味しいかい。
すると彼はこう答えたんだ。
自分一人生きるのだって楽な話じゃないさ。
城を出ることにした。